プロゲーマーと消費税 ~賞金は?投げ銭は?スポンサー料は?~

最終更新: 2月26日

プロゲーマーの所得税(確定申告)に関する素晴らしい記事は、既に多くの方々が発信しておられます。しかし消費税についてはあまり言及されていないことから、本記事では、「プロゲーマーの消費税」をテーマに解説します。なお、理解のしやすさを重視するために、例外規定や厳密な取扱いについては省略している箇所がございます。


0.本記事の要点(お急ぎの方へ)


時間のない方は、少なくともこれだけ抑えてください。

・年間収入が1,000万超えたプロゲーマーの方は、消費税の申告を意識しましょう

・大会の遠征費をスポンサーに実費精算してもらっている場合、思いもよらず納税義務が課せられることがあります

・軽減税率や簡易課税など、消費税は複雑な点も多いので、無理せず税理士に相談しましょう



1.なんで消費税?プロゲーマー関係あるの?


あるのです。


いったい、プロゲーマーと消費税にどのような関係があるのでしょうか。

理解のために、まず、消費税のしくみについて簡単にご説明します。消費税とは、皆様がお買い物をしたときにかかるアレです。最近10%になりましたね。


私たち一般消費者が買い物をするとき、100円のものに10%(10円)の消費税がかかり、代金110円を払いますね。でもこれ、国に払う税金なのに、なんでお店に払ってるんでしょうか?


答えは簡単で、お店などの事業者が、私たち消費者が払った消費税をいったん預かって、後でまとめて国に払ってくれてるんです。(消費税の申告といいます)


で、事業者はモノを売るだけでなく仕入れとしてモノを買ってもいますから、

消費税を売り手として受け取ってもいるし、買い手として払ってもいます。

なので、消費税の申告をするときに、


「この1年で受け取った消費税 - この1年で払った消費税」


の差額を計算して、国にドーンとまとめて支払うわけです。 (ここは今は難しく考えちゃダメです。そういう風になっているのです)

これが消費税の基本的な構造です。



前置きが長くなりましたが、ようやくプロゲーマーの話になります。


上の説明で、消費税を納税するお店を「事業者」と呼びましたね。 そう、プロゲーマーも事業者なのです。 全員が全員とは限りませんが、事業としてプロゲーマー活動をしている方は、ほとんど事業者です。 ですので、先ほど例に挙げたお店と同様に、消費税の申告をしないといけないんですね。


「そうは言っても、自分はモノ売ったりしてないし、関係ないよ」と思うかもしれません。

いえいえ、受け取ったスポンサー料には消費税が含まれているかも。もらったその投げ銭、消費税含まれてないですか?大会の賞金は? だんだん怖くなってきますね。でも大丈夫。ひとつひとつ見ていきましょう。



2.消費税の納税義務がない人


ざっくり言うと、基準期間(2年前と考えてください)の、「1年間の消費税がかかる売上」が1,000万円以下の場合、『免税事業者』となれるので、消費税の申告をしなくてOKです。 でも例外があるので、自己判断は危険。なるべく専門家に相談しましょう。



3.プロゲーマーの消費税のかかる取引、かからない取引


さて、ではプロゲーマーの皆さんが『免税事業者』ではないとします。消費税は、下記のすべてを満たす取引についてかかってきます。


1.国内において行われるものであること 2.事業者が事業として行う取引であること 3.対価を得て行う取引であること 4.資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供等に係る取引であること



難しいので、具体例で見ていきましょう。


①プロゲーマーが大会に参加し、賞金をもらった場合


国税庁のWebサイトに言及があります。


・・・(略)・・・例えば、次のいずれの要件をも満たす場合の賞金等は、資産の譲渡等の対価に該当する。
(1) 受賞者が、その受賞に係る役務の提供を業とする者であること。
(2) 賞金等の給付が予定されている催物等に参加し、その結果として賞金等の給付を受けるものであること。

要は、

(1)賞金を獲得した人が、その競技を業としていること

(2)大会に賞金があることがあらかじめわかっていて参加し、その結果賞金を受け取ったこと

にあてはまるならば、上の4つの要件のうち「4.」を満たしますよ、ということです。


なので、結論としては、プロゲーマーが賞金を得た場合、

海外大会の場合は、消費税がかかりません。(「4.」を満たすが、「1.国内において行われるものであること」を満たさない)

国内大会の場合は、「1.」~「3.」を満たせば、消費税がかかるとみてよいでしょう。



②プロゲーマーが受け取ったスポンサー料

難しい話ですが、消費税がかかるものとかからないものがあります。

ア)スポンサー料の対価として広告宣伝などをしない、つまり純粋な寄付の場合は、「3.対価を得て行う取引であること」を満たさないので消費税はかからない(あまりなさそうなケースです)

イ)スポンサー料の対価として、スポンサー企業の広告宣伝などを行う場合(ほとんどのケースがこっちだと思います)は、以下に場合分けされます。

  • 広告宣伝活動を海外のみで行う場合 「1.」を満たさないため、消費税はかかりません。

  • 広告宣伝活動を国内のみで行う場合 「1.」~「4.」のすべてを満たしますが、例外的に、国内スポンサーの場合は消費税がかかり、海外スポンサーの場合は消費税がかかりません。

  • 広告宣伝活動を国内外、両方で行う場合 もらったスポンサー料に対し、国内での広告分がいくら、海外での広告分がいくら、と区分できる場合は、上の2つに従います。 でも、そんなケースはほぼないと思うので、スポンサー企業の場所が国内か海外かで区分します。すなわち、国内スポンサーの場合は消費税がかかり、海外スポンサーの場合は消費税がかかりません。


③プロゲーマーが配信で投げ銭をもらった

投げ銭については、「払った対価として何かを得る」というよりは、対価性のない寄付に近いものであるから、基本的には消費税がかからないという考えが主流です。

しかしnoteの投げ銭については、とある税理士先生の記事で、noteのカスタマーサポートより消費税が含まれているとの回答があったとあるので、慎重な判断が必要です。 https://taxtoast.com/2019/11/27/note-support/


4.スポンサーから、大会の遠征費が実費支給された場合は?


スポンサーが、遠征費用(飛行機代、宿泊費など)を負担してくれるケース、よく耳にしますよね。この場合の消費税の取扱いは注意が必要です。


  • 交通機関やホテルへの支払いを、実質的にスポンサー企業において行っている場合(チケットを現物でもらったり、○○ホテルとっておきました!支払いもしておきました! というようなケース)は、原則、消費税はかかりません。

  • いったんプロゲーマー側で立替払いしておいて、後から実費で清算するような場合は、原則、立替払いしたときと清算されたときにそれぞれ消費税がかかります。『払った後、同額もらう』なので基本的にはプラマイゼロなのですが、上で述べた、免税事業者となるための『課税売上1,000万円』の計算にこの立替額が含まれてしまうので、「自分はスポンサー料年額900万だから免税事業者」と思っていたら、実は遠征費が100万円以上あって課税事業者だった。などということにならないようご注意ください。




いかがでしたか。とても複雑で、読むのが途中でいやになってしまったかもしれません。

うまく理解し、正しく納税をしていただければと思います。

消費税は簡易課税制度というものがあり、上手に適用することで節税できますので、ぜひ専門家にご相談いただければと思います。

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