アメリカのプロゲーマーに重くのしかかる「アスリート税」

昨年末、アメリカのeスポーツ選手「Jay Won」氏のツイートが話題になりました。



Overwatch グランドファイナルで得た収益の55%(!)が課税されるぜ!という内容です。

顔文字はニッコリしておりますが、その心情、察するに余りあります。




さて、日本はプロゲーマーという職業について、

なんら特別な税金が設けられているわけではありません。

税金を考えるうえでは、他のプロスポーツ選手(野球とかテニスとか)や、自宅で仕事をする方々

(作家など)がどうやって税金の計算をしているか?が、大いに参考になります。



では、海外はどのようにプロゲーマーの税金を取り扱っているのでしょうか?



日本はゲーム人口が多いものの、残念ながらeスポーツとしては後進国。

他のeスポーツ先進国を調べることで、何か見えてくるものがあるかもしれません。


海外といっても韓国・欧米など色々ありますが、本記事では上のJay Won氏の拠点であるアメリカに

ついて取り上げます。


※注

本記事の執筆のきっかけがJay Won氏のツイートであるということであり、本記事はJay Won氏の

「55%課税」の内容について保証しているわけではございませんので、ご注意ください。



1.米国でも、既存の職業と同じ枠組みでeスポーツ選手の税金計算をしている


まず大枠として、米国でも「eスポーツ選手独自の税制」というものは現時点でありません。

言い方は悪いですが、世の中の職業がひとつ増えたに過ぎませんので、「よし、『eスポーツ選手の

税金に関する法律』を作ろう!」とは現時点でなっていないわけですね。

日本と同様に、「賞金、スポンサー料、ストリーマー収入」などにつき課税されています。


しかし・・・




2.米国には「州税」がある


米国の所得税には、「連邦所得税」のほかに、州に払う「州所得税」もあるんですね。

日本にも、地方に支払う住民税がありますが、この州所得税はちょっと特徴的。

州は自治権も強いので、州によって税率もかなりバラバラですし、

州所得税自体がない州もあります。


アメリカのeスポーツ選手やプロチームにとっても、どの州を拠点とするかで、

支払う税金も変わってきます。




3.アスリートに課せられる「Jock tax(運動選手税、アスリート税)」


さて、本題はここからです。

アメリカには通称「Jock tax」と呼ばれている州税があります。

本記事ではわかりやすく「アスリート税」と訳します。


スポーツ選手をイメージしてほしいのですが。

スポーツ選手は、特定の州に留まって活動をするわけでなく、

色々な州や、時には海外に出向き、試合に出場したり、練習したり、ファンサービスをしたりしま

すね。


ですので、よその州からしたら、

「あなたは○○州の居住者なのに、うちの州でも試合に出て儲けてるよね。税金払ってよ」

となるわけです。

支払ったアスリート税は、居住地の州の税額から控除できますが、完全にプラマイゼロになるわけ

ではないので、実質的には追加負担となってしまうケースがほとんどのようです。


そして、

このアスリート税の課税対象に、プロeスポーツ選手もあてはまってしまいます。


eスポーツの大会は州の色々なところで行われていますので、選手の所得も、様々な州から発生しま

す。まさにアスリート税の対象ですね。


このアスリート税、州によって税率が違ったり、活動日数などの割合で「○○州は何パーセント、

△△州は何パーセント・・・」と計算したりするので、なかなか大変。


とてもアスリート個人で計算するようなものでなく、会計士などの専門家を雇ったりして対処して

います。そのコストもかなりかかってくることでしょう。


現在、米国では様々なWeb新聞において、

「eスポーツ選手はJock taxがかかるから気をつけてね」と警鐘を鳴らしています。

eスポーツ選手に対する税金リテラシーを高めようとする社会的な動きが、少なからずあるようです。


Jay Won氏の「55%課税」も、別の記事(海外サイト)によるとこのアスリート税絡みの影響がある

ようですね。





4.選手以外も課せられる可能性がある


このアスリート税、選手に同行するeスポーツチームの関係者等も課せられる可能性があります。

そういったスタッフは選手と比べ所得が少ない場合も多く、このような税金が課せられるのは批判

的な意見もあるようですが、現在はそういうルールとなっています。






いかがでしたでしょうか。

本日は、アメリカのeスポーツ選手に対しどのような税金が課されているのか、

アスリート税を中心に、日本との違いについて説明しました。

海外の桁違いの賞金にばかり目が行きがちですが、こうした税制上の違いもあるのですよ、とい

うことが伝われば幸いです。


日本はまだまだ市場が未成熟で、さらに賞金額等で法律上の制限があります。

しかしそれらも少しずつ突破口が見えてきており、

また税金の面においても比較的シンプル。課題も多いですが、光も少なからず見えてきていますね。



お読みいただき、ありがとうございました。


<参考URL>外部サイト:英文

https://www.washingtonpost.com/video-games/esports/2020/01/15/esports-players-tax-man-

cometh/


https://esportsinsider.com/2017/10/esports-tax-law-considerations-professional-gamers/


https://gammalaw.com/esports-new-esports-players-must-reckon-with-the-jock-tax-and-

other-tax-related-issues/

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