目次
この記事は、以下の内容についてまとめています。
こんにちは。税理士の成澤です。
YouTuberの方には、他者から収益化済みのチャンネルを購入し、そのチャンネルを用いて広告収入をあげられている方もいらっしゃると思います。チャンネル購入をすることで、収益化までの高いハードルをスキップする戦略ですね。
最初にこの話を聞いた時は、直感的に「え、チャンネル購入ってアリなの?YouTubeの規約違反じゃないの?」と思いましたが、どうやら規約にはアカウントの売買を明確に禁止する項目は無いとのことで、この記事の執筆時点ではチャンネル売買自体は問題ないようです。
ところで、チャンネルを購入したYouTuberの皆様の中には、「チャンネル購入費用は経費にできるの?」と不安に思われる方も多いかと思います。チャンネル購入費用は高額になりやすいですから。高額の支出については、固定資産扱いとなり一括で費用にはできないケースがあることをご存じの方もいらっしゃると思います。YouTubeチャンネルの場合は確定申告でどのように扱えばよいのか、気になりますよね。
もし資産扱いとなる場合、勘定科目はどうすればいいのか、耐用年数(償却年数)は何年か、など色々と悩みますので、この記事でまとめてみることにしました。
※本記事の内容には、執筆時点における筆者の見解が多く含まれます。本記事の内容に基づいて税務判断をされる場合、自己責任でお願いいたします。当事務所では一切の責任を負うことができません。
早速結論ですが、チャンネルを購入した際の勘定科目は繰延資産とするのが妥当と考えます。繰延資産は、固定資産とは似て非なるものですが、資産計上した上で償却し、徐々に経費化するという点では共通しています。(任意償却可能な繰延資産なども多くありますが、ここでは割愛します)
繰延資産とは、以下のようなものを指します。
(所得税法2-1-20)
繰延資産 不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務に関し個人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもので政令で定めるものをいう。
(法人税法2-24)
繰延資産 法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもので政令で定めるものをいう。
そして、法にある「政令で定めるもの」とは以下のものをいいます。
(所得税法施行令7-1)
法第2条第1項第20号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、個人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。一 開業費(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)
二 開発費(新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用をいう。)
三 前2号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの
イ 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
ロ 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
ハ 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
ニ 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
ホ イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用
(法人税法施行令14-1)
法第2条第24号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。一 創立費(発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきものをいう。)
二 開業費(法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)
三 開発費(新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用をいう。)
四 株式交付費(株券等の印刷費、資本金の増加の登記についての登録免許税その他自己の株式(出資を含む。)の交付のために支出する費用をいう。)
五 社債等発行費(社債券等の印刷費その他債券(新株予約権を含む。)の発行のために支出する費用をいう。)
六 前各号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの
イ 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
ロ 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
ハ 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
ニ 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
ホ イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用
太字で記載した「イからニに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用」に、YouTubeチャンネル購入費用が該当するというのが私の見解です。
YouTubeチャンネルは購入した瞬間に支出の効果(つまり、広告収入)が発生するわけではなく、その後の動画投稿を通じて徐々に広告収入が発生していきます。収益自体は個々の動画から発生するものですが、その「箱」としてチャンネルは必要であり、「便益を受けるために支出する費用」に該当すると考えられます。また、一般的には1年以上の期間にわたってチャンネルを運営していくことが想定されることから、繰延資産の定義を満たすものと考えられます。(逆にいえば、何らかの理由で支出の効果が1年未満であることが明らかである場合には、繰延資産に該当しないこととなります。)
また、繰延資産ではなく、無形固定資産ではないか?という主張も考えられますが、固定資産とは「棚卸資産、有価証券、暗号資産、繰延資産以外のうち次に掲げるもの」として法令で定められており、まず繰延資産に該当するか否かの判定が先にくること(所得税法施行令5、法人税法施行令13-1)、また、無形固定資産として列挙されているもののいずれにも該当しない(ソフトウェアかと言われると違いますよね)と考えられるので、繰延資産が適当というのが私の見解です。
では、繰延資産として資産計上した場合、どれくらいの期間で費用化すればよいのでしょうか(償却期間といいます)。
YouTubeチャンネルの場合、支出の効果の及ぶ期間の月数で償却することとなります。(所得税法施行令137-1-2、法人税法施行令64-1-2)
例えば、チャンネルを購入後、5年間収益が発生することが見込まれる場合、償却期間は60ヶ月(12ヶ月×5年)です。
ただ、ここの見込み期間の判断が難しく、YouTubeチャンネル購入時に検討すべき一番のポイントです。支出の効果が及ぶ期間は何年なのでしょうか。チャンネルはあくまで「箱」ですので、動画コンテンツ次第で長期間安定して運用することも、全く支出の効果が及ばないことも考えられます。
既にいくつものチャンネルを保有している方であれば、これまでの実績から購入時に大まかに見積もることはできるでしょうが、まだ運用実績が浅い方はどうすれば良いか、悩みますよね。
当事務所では、これまでの経験から、お客様の状況に応じて適正な償却期間を共に考えさせていただき、助言させていただきます。判断に迷われた場合は、ぜひお気軽にお問合せフォームからメッセージをいただければと思います。
なお、これまでの話に関わらず、YouTubeチャンネル購入の対価が20万円未満であった場合は、償却をせずに購入時に一括で費用計上することが可能です。(所得税法施行令139の2、法人税法施行令134)
いかがでしたか。
当事務所は、YouTuberの方々の確定申告業務を積極的に行っております。
ぜひ一度、お気軽にお問合せフォームからメッセージをいただければ幸いです!
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